「オウンドメディアは消費者向け(BtoC)」というイメージが大きいですが、BtoB企業においてもオウンドメディアは役立つものです。
むしろ、BtoBの方が効果が大きいとも言えるでしょう。
本記事では
- BtoB企業がオウンドメディアを始めるメリットとデメリット
- BtoB企業におけるオウンドメディア運営の3パターン
- BtoB企業がオウンドメディアでやってはいけないこと
- BtoB企業のオウンドメディアの段階ごとの戦略
- BtoB企業のオウンドメディア成功事例10選
について、オウンドメディア初心者でも分かりやすいように解説しています。
ぜひ最後まで読んで、オウンドメディアを使ったコンテンツ発信をはじめ、売上や認知度のアップにつなげてください。
BtoB企業がオウンドメディアを始める6つのメリット
BtoB企業がオウンドメディアを始めるメリットは以下の6つです。
競合が少ない
BtoB企業の営業方法は「テレアポや企業訪問によるところが多い」というのが現状でしょう。
つまり、オウンドメディアに参入しているBtoB企業はあまり多くありません。
営業は、需要があるけれど競合が少ない場所で行った方が効果が高まります。
競合が参入していないうちにオウンドメディアを始めておけば、市場を独占できる可能性もあるでしょう。
他社が実施していないことを自社だけが行っているということは、ブランディングにつながるため、大きな差別化になります。
ナーチャリングになる
ナーチャリングとは「潜在的な顧客→見込み顧客→リピーターや有料顧客」といったように育成していくことを指したマーケティング用語です。
BtoB企業で扱っている商品は単価が高いことが多く、検討期間が長くなりがちです。
オウンドメディアを使えば、潜在的な顧客を集めて、企業についてより深く知ってもらうきっかけになります。
初期はサービスや商品の購入につながらなくても、コンテンツに何度も触れてもらうことで、最終的には購入してもらえたり、継続的に取引してくれたりする顧客になってもらえます。
営業活動に活かせる
オウンドメディアは、営業活動にも活かせます。
オウンドメディア内に分析ツールやクロージングにつながるアイテムを置いておけば、顧客のデータを集められるからです。
例えば、オウンドメディア内で無料のメールマガジンや営業に使えるツールなどを置いておき、メールアドレスや社名などの自社で欲しいデータを入力すると利用できる仕組みを作ります。
訪れたユーザーの中で「無料であれば使ってみようかな」という層は、確実にそのサービスに関する悩みを持っているでしょう。
そこで集まったユーザーのデータを基に営業をかけていけば、情報がなく話すら聞いてもらえない不特定多数の人に営業をかけるよりも効果があります。
投資回収がしやすい
BtoCのオウンドメディアに比べて、BtoBのオウンドメディアは投資回収がしやすいというのもメリットです。
SNS・ブログ・コラム、どのオウンドメディアを使ってもあまり費用がかかりませんが、それでも外注費やサーバー代などはかかります。
BtoB企業の商品は、単価が高いため、何個か売れればオウンドメディアに費やした金額を一瞬で回収でき、費用対効果が高いです。
SEOに評価されやすい
SEOとは、Search Engine Optimizationの略で、「検索エンジン(主にGoogle)に最適化する」ことを示した言葉です。
企業オウンドメディアは全体的にSEO的に評価されやすいですが、特にBtoB企業はニッチなジャンルの専門性が高いため、E(Expertise:専門性)、A(Authoritativeness:権威性)、T(Trustworthiness:信頼性)を大切にするSEOに「E」の部分で評価されます。
広告費をかけずに安定した集客ができる
オウンドメディアはペイドメディアと異なり、他の媒体にお金を払う必要がありません。
一度検索で上位表示されれば、長期間にわたって安定した集客手段となります。
サービスや商品を使っている際に不具合が起きた時の対応方法などをコンテンツ化しておくことで、1度だけのユーザーではなくリピーターとなってもらうことも可能です。
BtoB企業がオウンドメディアを始める3つのデメリット
BtoB企業がオウンドメディアを始めるのにはメリットが大きいですが、デメリットもあります。
詳しい知識を持っている人が限られる
BtoBのジャンルでコンテンツを作るためには、ニッチな知識が必要です。
コンテンツを作成する人には、SEOなどのオウンドメディアに関する知識に加えて、自社の抱える商品まわりの情報について詳しく知っている必要があります。
自社内の人材だけでオウンドメディア運営を行うのでしたら問題ないかもしれません。
しかし、外部に委託する場合は、単価が高かったり、人材がなかなか見つからなかったり、ということが起こります。
信頼の獲得に時間がかかる
オウンドメディアは、集客や売上の面で結果が出るのに時間がかかります。
中でも、BtoBのジャンルは検索される回数が少なく、コンテンツの内容が評価され顧客の信頼が得られるまでに時間が必要です。
時間がかかることを念頭におきながら、質の良いコンテンツを積み上げるようにしましょう。
BtoB企業におけるオウンドメディア運営の3パターン
BtoB企業がオウンドメディアを運営するには「気づきを提供」「信頼の獲得と差別化」「サービスや商品へのサポート」の3つの方法があります。
上記の3つは、1つに絞るのではなく組み合わせての展開もできるため、目的に応じて選択しましょう。
①気づきを提供する
BtoBのオウンドメディアで最も大切なのが「顧客に新しいヒラメキや発見を提供する」ことです。
「ヒラメキや発見」と言っても難しく考える必要はありません。仕事をする上で得られた経験やノウハウを共有するだけです。
同じようなテーマであっても、仕事の過程で得られた経験やノウハウは異なります。
読んだ顧客の何割かに「そんな考え方があったのか!」や「このサービスは自社の課題を解決してくれるかも?」と思ってもらえれば、企業自体に興味を持つきっかけになります。
顧客の悩みを解決するようなコンテンツを作っていきたい人におすすめです。
②信頼の獲得・差別化
発信する業界やジャンル内での「信頼獲得」や「差別化」が目的のパターンもあります。
こちらのパターンは、
- 商品の見た目だけではクオリティが判別できない(例:Webサイト制作 )
- 顧客からの求められていること(ニーズ)が明確(例:Webサイトを制作したいけど、社内に人材がいない)
- ニーズに対して解決策が用意できる(例:あなたの代わりにWebサイトの運営を行います)
- 商品のクオリティが人や会社の能力で変わる(例:コーダーやデザイナーの能力に左右される)
といった項目に当てはまるテーマのオウンドメディアが向いています。
③自社商品へのサポート
もっとも取り組みやすいパターンは、この「自社商品へのサポート」でしょう。
こちらのパターンは「サポート体制が充実していることをアピールし、既存顧客の継続率や満足度をアップさせる」ことが主な目的です。
自社の商品について1番詳しいのは自社であり、顧客からの意見などのデータも揃ってるはずです。
- 使い方のマニュアル
- 顧客からの相談内容を基にした良くある質問集
- 新規アップデートによる変更点の共有
など、自社商品のサポートになるコンテンツを作り、魅力を伝えましょう。
既存顧客の満足度が上がれば、上位プランへの変更(アップセル)や関連商品の追加購入(クロスセル)が見込めます。
BtoB企業がオウンドメディアでやってはいけないこと
BtoB企業がオウンドメディアを運営する際は、以下の2つに注意しなければいけません。
すでに運営中の人は、自社オウンドメディアが該当しないか確認してみてください。
自社の自慢ばかりする
BtoB企業のオウンドメディアでもっともやってしまいがちなNGポイントが「自社の自慢」です。
企業として「こんなサービスがあるんです!」や「社長はこんなにも凄い人なんです」といったメッセージを全面に出したい気持ちは分かります。
しかし、そのメッセージが行き過ぎてしまうと、コンテンツの良さを伝える前に「なんだ、ただの会社自慢か……」と、コンテンツやオウンドメディアから離脱されてしまいます。
顧客のニーズに沿ったコンテンツを作成して満足度を上げ、その目的が達成されてきた段階で少しずつサービスや人材の良さを伝えるようにしましょう。
独自性を全く出さない
「BtoBのオウンドメディアは競合が少ない」とは言っても、同ジャンルで発信しているBtoB企業がない訳ではありません。
SEOをはじめとした上位表示される型がある程度決まってしまっているオウンドメディアでは、コンテンツのどこかに独自性がなければ、他社のものと代わり映えのないため、あってもなくても同じと見なされてしまいます。
他社にはない独自の視点や内容の濃さで差別化していきましょう。
BtoB企業のオウンドメディアの段階ごとの戦略
BtoB企業がオウンドメディアを運営するなら、「初期段階」と「軌道に乗った後」で戦略を変えましょう。
オウンドメディアの作成方法について知りたい人にはこちらの記事がおすすめです。
初期段階
初期段階では、オウンドメディアとしての知名度がないため、「コンテンツの発信」と「認知度アップにつながる活動」を同時に行います。
まず、コンテンツの発信は「最低週1本」で行いましょう。
1週間以上更新がないと、顧客から「このオウンドメディアは情報が古そうだな」や「もう配信が止まってしまっているオウンドメディアなのかな」といった印象を持たれてしまいます。
オウンドメディアの初期段階では「3ヶ月〜半年程度は週1本の発信」が行えるように、常にストックを貯めておきましょう。
次に認知度のアップには、ペイドメディア(Web広告 など)や現在運営しているメディアを使います。
具体的には
- 企業の公式サイトでの告知
- プレスリリース
- 企業SNSによる告知
などの手段です。
自社商品との相性を見ながら、使えそうなメディアで発信をしていきましょう。
軌道に乗ってきたら
「軌道に乗る」とは、検索エンジンからある程度流入が増えてきた状態を指します。
流入が増えてきたら、得られたデータを分析して、効果的な方法を探っていきましょう。
分析するためには
- 集客数(オウンドメディアを訪れた人数)
- PV数(コンテンツを訪れた人数)
- CV率(コンテンツを見た人の何割に商品が買われたのか)
- リピート率(同じユーザーが何割再訪問しているのか
などのデータを集める必要があります。
例えば「集客数は多いのにPV数が少ない」状態だったとしましょう。
この場合、原因は
- コンテンツのタイトルが魅力的でない
- コンテンツのデザインが目をひかない
- オウンドメディア全体のデザインがまとまっていない
といったものが考えられます。
原因の推測ができたら、1つ1つ改善していって顧客にウケるポイントを探っていくABテストを行うのがおすすめです。
BtoB企業のオウンドメディア成功事例10選
ここまで読んでもらえれば、BtoBのオウンドメディアについて、ある程度理解が深まったことでしょう。
次は、運営する上で参考になりそうなBtoBオウンドメディアの成功事例を10個紹介していきます。
完全に真似することはNGですが「なぜ成功しているのか」の要素を抜き出して参考にしましょう。
①Social Media Lab
「Social Media Lab」は、SNS全般のマーケティング関連の事業を行っている「Gaiax」が運営するオウンドメディアです。
オウンドメディア内では、企業のSNS運用担当者に対して、SNSで困りがちな事例の解決策を提案し、メインのコーポレートサイトに送客することで結果を出しています。
アップデート情報などのトレンドにもいち早く対応し、情報の詳しさやスピード感によって独自性を出しています。
②経営ハッカー
「経営ハッカー」は、クラウド会計ソフト「freee」などで知られる「freee株式会社」が運営するオウンドメディアです。
「確定申告」などのビックキーワードで上位表示を獲得し、商品の対象となる経営者や個人事業主を、クラウド会計ソフト「freee」の無料版へと送客しています。
幅広い事業の人々にインタビューし、あらゆるジャンルに対応できる印象を与えているのも参考になるポイントです。
③テレアポ職人
「テレアポ職人」は、クラウドサービスのメーカー「株式会社INTERPARK」が運営するオウンドメディアです。
「テレアポ」という、確かなニーズはあるもののノウハウが貯まりにくいジャンルで使えるテーマを基にコンテンツを発信しています。
オウンドメディア内に『30日の無料体験や問合せ→クラウドサービス「サスケ」への送客』という導線が分かりやすく示されているので、紹介したい商品が決まっている場合は参考にすると良いでしょう。
④バーコード講座
「バーコード講座」は、工場の自動化を行う総合メイカー「株式会社キーエンス」が運営するオウンドメディアです。
「バーコード」というニッチなジャンルにおける検索上位を獲得し、資料ダウンロードや問い合わせによって日々の営業活動に活かしています。
何か特殊な専門性をもつBtoB企業には参考になるオウンドメディアです。
⑤ばね探訪
「ばね探訪」は、東海バネ工業株式会社が運営するオウンドメディアです。
同社の歴史や製品が使われる企業へのインタビューを通じて、企業の価値観や実績が分かりやすくまとめられています。
コラムや本のようなコンテンツが多く、オウンドメディアで自社のブランディングに注力していきたいという人には参考になるでしょう。
⑥動画幹事
「動画幹事」は、株式会社ユーティルが運営する動画制作ジャンルに特化したオウンドメディアです。
動画制作の流れや相場などをブログ記事としてコンテンツ化し、「動画制作を外注したい」と考えている個人や企業を集客しています。
1つのオウンドメディアでランディングページや商品へ誘導したいという人には参考になるでしょう。
⑦WISDOM
「WISDOM」は、日本電気株式会社(NEC)が運営するオウンドメディアです。
日本だけに限らず、世界各地の最先端技術の情報について解説されています。
目的は「NEC ID」と呼ばれるアカウントを作成してもらうことで、顧客データを集めて営業やキャンペーンへ参加のきっかけとしています。
メルマガなどの別媒体に集客したい場合は参考になるでしょう。
⑧plasticfilm-labo.com
「plasticfilm-labo.com」は、機能性フィルム製品の製造や加工を行う「PANAC株式会社」が運営するオウンドメディアです。
「プラスチックフィルム」というニッチなジャンルについてのコンテンツを発信し、Webサイトへの流入や資料のダウンロードへと繋げています。
⑨制御機器知恵袋
「制御機器知恵袋」は、Panasonic株式会社が運営する制御機器に関するオウンドメディアです。
オウンドメディア内では、エンジニアに向けてそれぞれの機器の基礎が学べるコンテンツが置かれており、「制御機器サイトへの流入」や「eブックのダウンロード」につなげることを目的としています。
⑩FA羅針盤
「FA羅針盤」は、三菱電機株式会社が運営するオウンドメディアです。
自社商品を導入した企業の変化をコンテンツにしており、独自性を発揮しています。
コンテンツの購読にはアカウントの作成が必要であるなど、初期段階では参考にしにくいですが、軌道に乗ってきた段階での参考になるでしょう。
まとめ
本記事では、BtoB企業のオウンドメディア運営に関するメリットや進め方などについて解説しました。
BtoB企業のオウンドメディアには、大きなメリットがある一方で、デメリットもあります。
運営方法にもいくつかパターンがあり、ジャンルによって相性の良さが異なります。
BtoB企業においては、自社の商品やイメージに合わせた運営を強く意識しておきましょう。